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2002-09-22 国際シンボルマークの誤用の考察

 2002-09-14の国際シンボルマークと題した社説で広島電鉄の超低床電車のグリーンムーバー(5000形電車)に国際シンボルマークが新たに設置されたことを報告した。このとき、この国際シンボルマークに関して左右が逆転していることも報告しておいた。その後、メールや掲示板のやり取りや路面電車だけではなくバスなどの国際シンボルマークなども観察してゆくうちにいろいろ興味深い点などがわかり今回ここに発表するものとする。(なお、タツヤのファン倶楽部で毎日の日記をお読みの読者さんによってはその思考過程をご存知のことなので再録に近いものとなっている。)

 国際シンボルマークとはすべての種類の障害者を対象として一定の基準を満たした施設や乗り物に対して障害者の利用が出来ることを示すマークのことである。名前だけではとても障害者を示すマークであることがわからないことと、その意匠(デザイン)が車椅子を強くイメージさせるために車椅子の人が利用できる施設や乗り物であること思われがちであることと、事実そのような取り扱いが行われている例が数多く存在して大変混乱を生じているのが現状である。


国際シンボルマーク

 

 今回の考察の一端となった写真から再度紹介してみたいと思っている。2002-09-13にこの写真を撮影したことから始まったのである。上記の正規の国際シンボルマークと見比べてもらえればすぐに分かると思うが、国際シンボルマークの左右の方向が逆転していたことが発端になっている。

 

 この国際シンボルマークを利用するには国際シンボルマーク使用指針がありこれを遵守する必要がある。この国際シンボルマークは日本国の法律で定められた道路標識のようなものではないので、この国際シンボルマークを障害者が利用できる施設や乗り物に取り付ける義務は存在していないが、この国際シンボルマークは財団法人日本障害者リハビリテーション協会が商標登録をしており無断で勝手な利用を禁じられている。しかしこの国際シンボルマークのを制定した精神にのっとり、一定の基準を満たす施設や乗り物に対して使用指針に基づいて使用する限りには無断使用でも国際シンボルマークの使用の差し止めなどの請求を裁判所に起こすことは行わない方針のようである。

 ここで私が提起したいことは今回の広島電鉄の超低床電車のグリーンムーバーの例にあるように、無用に国際シンボルマークの左右を反転させて使用することは無用な混乱のもととなる可能性があり、また使用指針にもしっかり禁止事項に書かれている内容であるので出来るだけ正規の国際シンボルマークを使用していただきたいことである。また、2002-09-14の社説とならんで障害者ではない読者さんにも国際シンボルマークの意義と理解をより深めてもらいたいと願っているところである。

 

 

★今回の誤使用に関して一番意見が多かったのが、左右を反転使用してもよいという限定条件に当てはまっているのではないかというものであった。限定条件とは障害者用の施設のある方向を指し示す矢印の脇にこの国際シンボルマークを取り付けたとき、車椅子のデザインに方向性があり施設の方向を示す矢印の方向と同じ方向に車椅子を向けてよいというものである。

 電停乗り場から電車に車椅子で乗り込むときの方向と一致していて直感的で分かりやすくこの逆転した方向を使用してもよいと言う意見であった。私も最初この話を聞いて一理あるなと思った次第であるが考察を進めてゆくうちに疑問点が数多く持ち上がりこの説では説明できないと判断した。

 ここで大切なことは国際シンボルマークが障害者を対象とした施設や乗り物を示すために定義されており乗り込む手順や方法を示すマークではないのである。もし乗車に関して特別な手順が必要な場合もっと他の図案などを使用して説明をしなければならないのである。
 またグリーンムーバーに車椅子で乗り込むときには、他の一般乗客と同じように電停乗り場からグリーンムーバーに乗り込むことが一義的に決まっており、車椅子だからといって特段に乗り場が違うということないので車椅子の方向性を指し示す必要性があるかどうかはなはだ疑問なところである。もちろん車椅子でグリーンムーバーに乗り込むときに限り電停乗り場からではなく反対車線の軌道上から乗り込む必要がある場合にはこのような車椅子のデザインの方向性を考慮する必要も考えられるが、実際そのような処置は全く考えられないので乗り込む方向性に関して合理性はないと考えている。

 ただ車椅子でグリーンムーバーに乗車するときには進行方向に対して最後部の車掌のいる扉から乗り込むことを考えてグリーンムーバーは設計されている。車体と電停乗り場をつなぐステップの設置やそのステップの取り扱いを車掌が行うことや車椅子を留め置く専用のスペースの有無などにより車掌のいる最後部の扉に車椅子の利用者を誘導する必要があると私は考えている。
 そこで車椅子の利用者に対して最後部の扉から乗車するように前方の扉の脇などに車椅子の乗車口を示す矢印と国際シンボルマークを設置することは望ましいことである。このときには車椅子の乗車口を示す矢印の方向にあわせて車椅子のデザインの方向を揃える処置を行っても限定事項に収まり問題はないと考える。

 このグリーンムーバーを障害者が使用できる乗り物と示すことを考えれば正面部分の国際シンボルマークは左右の反転をさせる必要はなく不合理であり使用指針に違反していると判断すのが妥当であろう。
 また下の2枚の写真を見比べていただければ分かると思うが、直感的に車椅子の乗り込む方向が分かるなどといったことは全く勘違いであることがわかる。左の写真が現在取り付けられている反転された国際シンボルマークで右側が画像処理で正規の方向に向けた国際シンボルマークの様子を示している。

逆転した方向のもの

正規の方向のもの

画像をクリックすると大きな画像が見られます

 

 

★今回のグリーンムーバーのような例は意外と数多く見受けられることが分かった。どうしてこのような誤使用が数多く存在しているのか?考察を行ってみた。

 下の写真を見ていただきたい。これはある貨物運送業者のトラックの右側面のデザインである。日本では乗用車やトラックなどのデザインを行うときに右側面を右読みするように文字を配置する習慣がある。基本的に前方から後方に向かって意匠(デザイン)や会社名・商標を描くのである。ただしなぜか英語や数字は左読みするように描かれることが多い。私はこのような習慣を「前方信仰」や「拝前主義」と呼ぶようにしている。これは日本に昔からある右から文字を書く習慣を利用して左右の対象性の美しさを重んずる日本人の美意識の一つだと考えている。これ自体、日本人の感性の高さを示すもので悪いこととは思っていない。

 

 今回のグリーンムーバーなどで国際シンボルマークの左右を反転させたことは、国際シンボルマークが世界的に普及しており、その使用に関して厳密な使用指針が存在することを知らずに安易に日本人の美意識だけで国際シンボルマークを取り付けたことに原因があると考えている。
 前面に貼り付けられている国際シンボルマークは下の写真で指し示すように、側面前方に設置したものが前方に回りこんだと考えれば理解しやすいと私は思っている。前面部分でも左側面に近いところなので左側面の前方信仰の影響を受ける範囲と考えられるからである。

 

 この前方信仰を考えるとバスなどで方向幕の左右に国際シンボルマークを取り付けたもののとき、その車椅子のデザインが中央部に向くように配置される理由が説明づけるのである。日本人の美的感覚からすれば同じ左右対象のデザインでも車椅子のデザインが外向きになるように配置することは考えられないのである。


撮影者:kenboさん

 このバスの国際シンボルマークを見ていると、グリーンムーバーの前面の国際シンボルマークが反転している理由だった乗り込む方向を直感的に表すと言う意見は全く当てはまってないことを表している。乗り込む方向を指し示すのであれば左右とも左向きの国際シンボルマークを使用しないと理屈に合わないのは当然である。やはり前方信仰があるからこその所業と考えるべきものだと私は考えている。

 

 

★現在のところウェブ上に公表されている使用指針から見ればこのような前方信仰によるデザインの変更は認められていないことになっている。しかし日本国における最終的な国際シンボルマークの使用の可否は財団法人日本障害者リハビリテーション協会が行うこととなっており、財団法人日本障害者リハビリテーション協会が許可すれば反転した国際シンボルマークを使用することができるはずである。現在のところ財団法人日本障害者リハビリテーション協会がこのような前方信仰による国際シンボルマークの反転を認めるかどうかは不明なところである。

 ただたとえ誤使用と判定されたとしても使用指針Q&Aを見る限り、今回のような誤使用ではすぐに方向を修正するように求められることは少ないことも読み取れる。次回の車検などの更新時に国際シンボルマークを修正することで折り合いをつけるように思われる。

 

★今回のような単に方向が間違っているような例に関しては基本的に障害者が施設や乗り物を利用できることを表現していることは間違いないのでそれほど大きな問題ではないと考えるようになってきた。
 国際シンボルマークの車椅子のデザインの部分を「車椅子」という主語にして、国際シンボルマークを設置できる基準を満たさない乗り物に車椅子を折りたたんで乗車するように呼びかけるものに使用されている例もあったからである。このような車椅子を示す誤使用の例があまりに多すぎてかなり問題は深刻なところにいっているように思われた。国際シンボルマークに関しても公共広告審査機構(JARO)などのように広報活動を十分に行わなければどんどん誤った解釈や使用方法が蔓延するばかりと私は考えている。

 この社説を読む読者さんだけでも、国際シンボルマークに関して正しい定義を知り、この問題点を知っていただけれることは大変有意義なことだと私は考えている。

 

【参考リンク】

国際シンボルマーク使用指針 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/resource/other/z00014/z0001401.html

国際シンボルマークの管理団体 財団法人日本障害者リハビリテーション協会
 

 

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著作:石崎達也 制作:有限会社タツヤ模型