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2002-10-10 北海道いのちの電話の報道に関して |
これも路面電車や公共交通に関する話題ではないが、とても考えさせられる新聞記事を発見したのでお伝えしたいと思って今回社説で述べることとしたものである。
2002年10月5日の中国新聞朝刊(16版)社会面(P33)に『「北海道いのちの電話」への相談 無断で録音 研修に利用』と題された報道が行われていた。内容は「北海道いのちの電話」での相談内容を無断で録音して研修に利用していたと言う内容であった。
今回の北海道いのちの電話に関しては、緊急に対応しなければならない特段の配慮が必要な状況下での相談であることをまず配慮しなければならないのである。電話の相談相手は自殺をも覚悟した人物を対象とする高度な相談を受ける立場の人たちなのである。私は電話を録音する行為自体に違法性があるかどうかの法律面に関しての知識はない。がしかし電話の相手先はこの電話を切った後に自殺を選ぶかもしれない緊急事態の切迫した状況にあるのである。このような相談相手に録音の可否を求めることなどは出来ないのは当然のことである。いのちの電話に掛かってくる電話には録音の同意を求めることが最初から不可能なものなのである。いのちの電話に掛かってくる自殺も考えた緊急で高度な問題の相談を受けておいてその内容を録音などに記録しておかないことの方が余程問題のことと思われてならないのである。相談を受けた相談員が適切な相談を行ったのか後で検証すらも出来ない事態の方がよっぽどか問題だと私は考えている。相談を記録することに問題があるとすれば、音声を記録しておかなくても相談内容を紙やノートに記載に記録していることも問題があるとに変わりはないはずである。単に記録を残す行為自体を問題にすることはナンセンスであり、録音やメモなどのその後の取扱が大切であることは明らかである。
相談内容は高度なプライバシーに関する内容であることは確かである。この内容を安易に公開するなどいったことが行われていたとすれば大変な問題でありとても許されない問題である。今回中国新聞で報道されているのはこの録音を研修に使用していたとする事実であり違法性の有無に関しては記載されていないが、違法性がないものを単に紹介するスタンスで書かれた記事ではないことは明らかである。私はここではっきり言いたい、貴重な生の息遣いのある録音などを実際に内部で研修することに何の問題があるのかということである。医者になるためには献体を解剖して勉強するように、相談員も医学生の解剖用の献体に相当する録音内容を聞いて自殺などの覚悟を決めた相談者に対する理解を深め、対応技術を高めてもらいたいと考えている。また自殺などを考えた相談者自身も録音内容を研修に利用されていたことを知って異論を唱えるものはいないと思われる。
もしこの社説を読んだ読者自身が失恋や多重債務・不治の病などのさまざまな理由により自殺を考えて、いのちの電話に相談した時のことを考えていただきたい。このとき自殺に行き着いた悩みや思いをうまく受け止め、自分に生きようとする心のこもった言葉を自分自身に投げかけられたときには自殺を思いとどまらせることも可能であろう。自殺を考えた相談者自身も何か思いとどまらせて欲しいと思って電話をかけるのであるから、必要最低限の経験や技量が必要なことは言うまでもないことである。実際に電話で相談を受けながら自分自身の理解や技量を高めることは必要であるが、一つの事案を多くの人たちが共有することも必要なことであるし、まだ駆け出しの相談員でもより早く理解を深めたり技量を高めることが出来る貴重な資料であることには間違いのないことである。初めて電話口で相談を受ける相談員であってもプロとしての対応が求められるとても厳しいものなのである。それも対応次第では相談者がそのまま自殺をするかもしれないといった極限状態での駆け引きが要求されるのである。
私は相談内容を録音して研修に利用することに違法性を見出し訴え出る相談者がいるとはとても思えないのであるが、違法性があるというのであればこのような適正な利用に関しては法制化を図り合法化すべき内容だと考えている。
中国新聞の記事には録音を相談員が自宅に持ち帰っていることもあったと記載されていたが、確かに持ち出した相談員が内容を漏洩させるつもりはなくても、第三者がこの録音を聞く可能性はあり、また持ち出したことにより録音を紛失する可能性もないわけでない。第三者に拾われた録音は高度なプライバシー情報を含んだ内容を聞くこともありえるので録音の持ち出しなどは原則行わないなどの処置が必要であったことは否めないことであろう。
私は今回の中国新聞の記事のタイトルにあるようにあたかも無断で録音して研修に使用することが悪いことのように記載されていることについて、とても違和感を感じる ものであるし、新聞の購読者に錯誤を与えかねないような記載は慎むべきと考えている。ここで表題にするなら録音テープの取り扱い方に問題があったわけで、これに関して「録音テープの取扱に不手際」などと記載するべき内容だと私は判断している。
今回の記事の背景には、おそらく「北海道いのちの電話」からの内部告発のようなものがあったのではないかと推測される。内部告発は組織の隠された問題点を社会に露呈させる性質もあるが、一部には組織の中にいる不満分子が組織の弱体化を狙ってのものもあることは事実である。私を含め物事を報道する立場の人間は内容をよく吟味し本質を捉え適正に報道することが求められているのではないかと私は考えている。
最後にこの中国新聞の記事の最後の部分に北海道いのちの電話の理事長の言葉として「今後は録音を取らずに研修する方法を検討したい」と締めくくられているが、決して録音内容を悪用したわけではないので、今後も研修に相談内容の録音を適正に使用すべきであるし、より優秀な相談員を一名でも多く輩出して欲しいと私は願っている。
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著作:石崎達也 制作:有限会社タツヤ模型