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メモ1 広島電鉄は路面電車博物館ではない?

 鉄道趣味誌を中心にして広島電鉄を紹介する文章として「動く路面電車博物館」と記述されることが多いことはこの読者さんならよくご存知のことでしょう。この「動く路面電車博物館」は一体誰が言い出したことか不明ですが、各地の路面電車の廃止に伴い、広島電鉄へ買い取られて集まった各地の路面電車が現役として活躍している状況はなんとも言いえた表現だと思っています。

 しかしこの「路面電車博物館」には注意が必要と思われます。なぜなら広島電鉄は公式に一言も「広島電鉄は路面電車博物館である」とは言っていないことです。

 これは私も初めて知ったときにはかなりショックを受けた内容でした。話は今からかれこれ8年も前のことですが、当時、鉄道模型の設計・製造を行う会社としてタツヤ模型は存在していました。広島電鉄へ模型資料の提供を求めて初めて広島電鉄に交渉に伺った時に聞いた話だったのです。当時はどこに話をしてよいものか不明でしたので、広報課と言う部署を電話帳で発見して話をすることとしました。初めて広報担当者とお話をしたときに上記の広島電鉄は路面電車博物館ではないとの話を聞いたのでした。(余談:当時は広報課は総務部などではなく何と資材部の中にあり、なんとも部と課の組み合わせの座りがよくない印象がありました。)

 話の内容としては、広島電鉄は公式には路面電車の博物館と言ったことはなく、あくまでも鉄道趣味誌やマスコミで路面電車博物館として取り上げられているだけであるとのことでした。もちろん一般担当者個人の勝手な発言で路面電車博物館という言葉が発せられる場合があるかもしれませんが、これは公式なものではないとも話をしていました。

 広島電鉄としては各地の路面電車を購入したのは動態保存する博物館のために購入したわけではなく、あくまでも実用として旅客を運ぶ路面電車(道具)として購入したものであるとの姿勢を貫きたいことが根底にあるようでした。

 購入した各地の路面電車を改造したり廃車・解体するのも広島電鉄は路面電車の博物館ではないので自由に行うのだというものでした。確かに購入した各地の路面電車には大掛かりなものから、小さなものまでさまざまな改造が加えられていることは路面電車愛好家にはよく知られた事実です。これらの改造は広島電鉄で運行させる上で必要とされるものでした。路面電車愛好家には不評であった屋根の上のクーラー機器の設置も利用客のサービス向上を目的としており、毎日利用する広島市民には大変好評であったことは言うまでもありません。

 広島電鉄は各地から購入した路面電車を使える電車として改造や手入れをしながら現在に至っています。この積極的な改造などにより、現役電車として生き残っているとも考えられ、博物館として保存するとか原型の姿を残すなどを考えていたら逆に旧型電車は残っていなかった可能性もあると私は考えています。

 クーラー機器の設置などはまさに時代の要求によるものであることは誰も意義を唱えるものはいないはずです。特に広島特有の風のない高湿度・高温の中でクーラーのない車輌には誰も乗りたくはありません。こうした時代の要求に対応してゆくことが企業に求められる姿勢だと私は考えています。

 このような時代の流れから生じる新しい要求に対応する過程で旧型電車の廃車・解体も当然ありうる選択肢であり、この選択肢を路面電車の博物館であるからとの理由で放棄することは広島電鉄としては企業存続上考えることが出来ないことも当然のことだと思われます。

 この考えに照らし合わせると、各地からやってきた路面電車と同様に広島電鉄の旧型電車の一つの650形電車(被爆電車)も当然同様の考えの立場に立つ可能性を否定することはできないものと考えています。

 ただし時代は流れており、都市交通として路面電車に注目が集まるようになった現在では運用可能な形で残っている旧型電車を商売のネタとして考えるように姿勢を軌道修正している可能性も否定することは出来ません。

 現在まで広島電鉄は各種の雑誌などで路面電車博物館と紹介されていることを否定していません。これはせっかく路面電車博物館とよい評判につながる可能性があるものを敢えて否定する必要はなく、世間の勝手な思い込みとして上手く利用してゆくことは事業を行う上で当然ありうることだと思っています。このような強かさ(したたかさ)がなければ、地方の中小私鉄が生き残ってゆけるものではないと私は考えています。

【写真解説】
 広島電鉄で購入した西鉄1203AB連接電車の改造前の姿です。

1203Aは現在の3003Bへ、1203Bは現在の3006Bへ改造されて現在でも活躍しています。大掛かりな改造が加えられた電車の一つです。

写真提供:碇シンノスケ
撮影:1976年7月23日 荒手車庫

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公開:2003-08-11 著作:石崎達也 制作:有限会社タツヤ模型