| 写真上達講座(初級編) |
【目的】
路面電車撮影日記の取材を行う上で様々な人たちと出会うことが出来ました。この取材の中で、写真に興味を持たれている人が数多くいることも知る事が出来ました。写真についてお話をお聞きすると、多くの悩みを持っていることも分かりました。そこで私が今までに獲得した写真についての知識や技術について個々にお話してきました。そこでこのウェブサイトを通じても一部ですが、私の写真についての考え方や知識や技術について紹介して多くの悩める写真初級者に役立てて欲しいと考えています。
ここでは簡単に初歩の初歩をお話します。
【写真事情】
近年は男性よりは女性の方が写真に積極的に取り組んでいることをインタビュー取材などから感じています。新聞か何かの調査だったと記憶しているのですが、中・高校生の写真部に在籍する男女の割合はかつての男性中心のものから現在は女性の割合が大きい(過半数以上)というデータも出ているようです。昔は機械いじりの趣向が強かった写真ですが、カメラの技術発展により機械に弱い女性でも取り扱いやすくなり、自己表現の道具としてカメラも本格的に市民権を得てきたことが女性を写真に向かわせているものと私は考えています。
この講座では写真を自己表現の道具として捉えて記述しています。写真を撮影するためにはカメラという機械の存在は必要不可欠なものですが、一部のカメラ愛好家の行う「カメラを持って撮影する行為を楽しむ」といった趣向のことは取り上げません。なおこのような趣向を私は否定をしません。たとえば自動車の本来の目的は人間や物を運ぶことです。しかしドライブとして自動車を運転することを楽しみとする行為も厳然として存在していることも事実ですし、一つの文化でもあると考えています。しかしこのような趣向に陥ってしまうと本来の目的を忘れることが多いことも事実であることも忘れないで欲しいと思っています。
【写真の目的とは】
さて写真の目的は何だと読者さんはお考えになりますか?私の考えは『写真は物事を誰かに伝える手段』だと考えています。たとえば報道の世界では事件事故を撮影して新聞などに掲載して事件事故を伝えることをしています。このような固苦しいものではなくても旅行なのど記念写真も物事を誰かに伝えるものなのです。旅行などの場合には、有名な観光地や名所旧跡を訪ねて、その前に立って写真を撮影することはよくあります。これは旅行の後で友人などに「こんなところに行ったよ」と伝えるための手段として使われることも多いことでしょう。しかし「旅行の写真の中には全く個人的な写真もあり、友人にさえも見せない写真も存在します」と反論をする人もいることでしょう。自分の記憶だけでは不十分で写真にも保険として撮影しておいた写真もよくよく考えてみると、将来その写真を見るであろう自分自身に伝えるために写真を撮影していることに気付くと思います。『写真は物事を誰かに伝える手段』とは他人だけでなく、自分自身も含まれる言葉なのです。
【写真への取り組み方】
上記の通り、『写真は物事を誰かに伝える手段』とはっきり認識することが写真を上達させるために第一歩なのです。ですから、はっきりとした目的意識を持って写真を撮影するようにすれば、何の技術習得がなくても写真を撮影する技術はみるみる向上するはずなのです。
写真を始めたばかりの写真愛好家の人たちは「何を撮ったらいいのか?」とか「どのように撮影したらいいのか?」などの疑問を持たれることが多いものです。しかし、『写真は物事を誰かに伝える手段』とはっきりと認識して物事を見たとき、あなたなりのものの見え方があるはずです。そのあなたの感じたものを如何に伝えるかを考えながら撮影することを繰り返して行けばよいのです。考えながら撮影を繰り返して行く内に、自然と技術や知識を習得して行くものだからです。一時的に教室の中で一方的に教えられた技術や知識はすぐに忘れたり、現実には応用出来ないものです。しかし実際の撮影の中で習得したものは、しっかりと記憶の中に残り、様々な状況の中で応用が出来るようになるはずなのです。
真っ赤に燃えた夕焼けや綺麗に晴れあがった富士山など見て感動することがあります。この感動を誰かに伝えたいと思ったとき、この感動をどのように伝えるかを工夫するだけなのです。
この基本的な写真への取り組み方を多くの写真愛好家の人たちにお話したところ、写真を撮影することが面白くなったと話を持ち掛けられることも多いのです。
【撮影の仕方】
「写真への取り組み方は分かりましたが具体的に何かヒントはありませんか」との問い合わせも多いものです。まず知って欲しいことは写真は絵画と一緒であることです。自然や町並み風景のときには、だれも否定が出来ないと思います。しかし絵画は空想の世界を描くことが出来るとされていますが、写真でも空想の世界の撮影セットや役者を用意して撮影すれば出来ないことはないのです。単純に費用が大きく必要とすることから現実的でないと考えるからです。しかし現在は写真をパソコンの中に取り込んで加工をすれば特撮ヒーローものような写真も意外と安価に制作が出来るようになっています。そのため写真と絵画はカメラを使うか筆を使うかの道具の違いや出来上がる作品の風合い(ここでは写真的なもの絵画的なもの)の違いでしかないと考えています。そこで写真を撮影する前に「絵画で描くとしたら」と考えると写真の構図など決めることが出来るようになります。
【構図の基本は日の丸】
まず最初は、自分が感動した物が出来事などを画面の中央部にしっかりと取り入れてみましょう。いわゆる日の丸写真と言われているものです。もちろん日の丸の旗のように被写体が中央部にどんと配置されていることから呼ばれているものです。一部には初心者の写真として忌み嫌う人もいますが、現実には「写真は誰かに伝えるもの」として考えた場合、意味不明にバランスを欠いた写真の方が余程か変なものなのです。
人間の心理として四角い紙の真ん中に日の丸のようにリンゴの絵が描かれていたとすれば、リンゴを伝えたいものだと理解できます。これが片側に極端に寄っていたり、隅っこに小さく描かれていると、何か不自然に感じたりします。ここであなたがリンゴの面白さを伝えたいと思うのであれば、躊躇無く中央部に日の丸のように物を配置して撮影することは、あなたが伝えようとする人に確実に面白いリンゴとして伝えることが出来ることでしょう。
【無意識に伝わるもの】
これも構図などの一部に含まれますが、伝えようとする被写体の周囲に空間が存在しています。たとえば上記のリンゴの場合、絵画であれば、周囲を描かないことでリンゴを強調することが出来ます。これと同様に写真でも周囲に白い布を敷き詰めて撮影すれば同様の効果が得られます。しかし現実の写真においては周辺の風景も一緒に撮影されてしまうことになります。実はこのおまけのように写り込んだ風景などが、被写体となるリンゴの置かれた状況などを説明するものとなるのです。それも写真を見る人にとっては中央部にある被写体のリンゴに注目しているので、それほど周囲の状況を気にしないで見ていることでしょう。しかし目から入ったこれらの周囲の情報もしっかり脳の中で処理されて、被写体のリンゴの状況を補完しているわけです。食卓テーブルの上に置かれて、脇にナイフが置かれていたとすれば、美味しそうなリンゴをこれから食べるのだなという意味合いを持たせることが出来ます。
この事から目的とする被写体の他に周囲に写り込む風景も大切な要素であることを認識しながらカメラのファインダーを覗くと新しい世界が見えてくると思います。写真は自然にあるものを意図も無くそのまま写すものではなく、自分が伝えたいことを如何に語らせるかが大切であることが分かると思います。
【一歩踏み込んだ構図】
では被写体となるものと周囲に写り込んでしまうものをどの様に処理すればよいのかと疑問が出てくるものと思います。ここから一歩踏み込んだ構図について考えてみます。
写真も絵画と同じように考えれば話は意外と簡単になります。見せたいもの、強調したいものは周囲よりも大きく描くと思いますが、写真においても同じです。画面に占める面積が大きければ目に飛び込んで来る被写体も大きく、意味も強く感じるようになります。ただし周囲の情報によって被写体を補完していることを考えれば画面いっぱいの大きさで撮影することはそれらの周囲の情報を捨ててしまうこととなるため、むやみに大きくすることにも限度があります。
小さくて綺麗な花を発見してこれを伝えたいと思って撮影する場合を考えてみましょう。闇雲に花に接近して撮影しても、花びらなどの細かいところはよく写っていることでしょうが、現実の花の小ささを伝えることは難しいと思います。人間は相対比較でものごとを理解します。花の周囲に比較対象となる大きなものと一緒に撮影すれば、小ささを強調することが出来るわけです。道路わきの花の場合、自動車のタイヤと一緒に撮影した時、写りこんだタイヤの大きさや位置関係から花の高さや大きさを見る人は自然と理解するものなのです。
知っていて欲しいことは人間の脳の中に擦りこまれて物の大きさの印象は写真の中では優先されてしまうことです。また太陽や雲、山並みは遠くにあるという遠近感も擦りこまれていることも一緒に覚えていると効果的な構図を発見することが出来るかもしれません。
広角レンズを使って被写体に接近して撮影すると、被写体は大きく周囲の様子は小さく写ってしまいますが、これは構図を整理する上で便利な撮影方法であることが分かるはずです。カメラと被写体と周囲の距離の調整によって大きさや位置をすぐに調整できるからです。
逆に望遠レンズを使って遠くの被写体を引き寄せて撮影した場合、被写体は自然と中央部よりになり、被写体以外の所は被写界深度の影響でボケてしまい被写体が浮かび上がってしまいます。ちょうど日の丸構図の基本例となってしまうわけです。
これらは何を伝えたいのかがはっきりしていれば使うレンズなどの自然と選択できるようになることを意味しています。
次に被写体の周囲の状況を説明する場合、絵画で例えると大きく描かれているものは手前にあり、小さく描かれているものは遠くにあるように感じます。また画面の低い位置にあるものが手前にあり、画面の高い位置にあるものは遠くにあるように感じるものです。これはそのまま写真にも当てはまります。これを適用しようとすると自然と日の丸構図から離れて行かなければならなくなります。
伝えたい被写体を近くに置いて撮影することは基本ですが、この場合被写体の位置が画面の中で低めであると、自然と手前にあると感じるようになります。逆に夕日や夕焼けを撮影する場合には、被写体は太陽や夕焼けの空となるわけです。遠くにあるものだから高めの位置に配置するとやはり自然に感じるようになります。人間の脳に擦りこまれている情報を上手く引き出してやることが大切なことなのです。
構図の中には色や明るさ形などによって様々ものが影響を与えます。内容が深くなってくるので割愛させていただきますが、これらの影響を与える効果を理解しながら物事を配置して撮影することによって、あなたの感動を誰かに伝えることが出来るようになります。
【写真には心が写る】
最後にお話することはとても大切なことです。写真に写っているものは実はあなたの心そのものであることを知っておいてください。あなたが伝えたいと思った出来事や感動などは全てあなたの心そのものなのです。そのため、あなたの心のあり様がそのまま写真に映し出されています。ここでは「写す」ではなく「映す」と漢字を使い分けています。
綺麗な夕焼けや富士山が目の前にあったとしても、感動がなければ撮影しようとは思わないはずです。心が動いたからこそカメラのシャッターを切ったわけです。美しいものを美しいと受け止められない心の持ち主には撮影出来ないわけです。写真で本当に大切なものは自分の中に美しい心が必要であることを知っておいて欲しいのです。心の貧しい人はやはり貧しい写真しか撮影できません。美しいものを美しいと見ることが出来なければ、撮影も当然に出来ないわけです。
そして写真を撮影することは、あなたの人格をそのまま裸にしてみんなの前にさらけ出すことでもあります。その証拠に旅行に出かけて撮影してきた写真を見せて欲しいと予想もしていなかった友達からせがまれたとき、あなたは全て写真を見せることが出来ますか?もちろん全部見せることが出来るという人もいると思いますが、この多くの場合には事前に全部の写真を見せることを前提に撮影しているものです。しかし見せることが出来る写真と見せることが出来ない写真があることは至極当然のことでなのです。なぜからばあなたの心のあり方がそのまま映っているからです。何に興味を持ったか、どんな食べ物が好きだとか、そして誰が好きだとか・・・。
逆に言うならば私のように写真で自己表現をしている写真家を生業としている人間は、心のストリッパーであるともいえます。私は路面電車が大好きです。だから路面電車を撮影し続けています。そして女性も大好きなので撮影し続けています。女性の部分については男性としての摂理かもしれません(笑)。
【Q&A】
■ 「写真を撮影しようとしたとき、ファインダーの中ではあれほど大きく見えていた被写体が、実際には小さくしか写っていませんでした。」という話はよくあるものです。このギャップは程度の差はあれ、だれもが経験することです。撮影するときの集中力が被写体を大きく認識してしまうように作用しているからです。一般的に被写体が大きく見える程集中力が高い人物だと言われています。これはスポーツ科学の世界でも有名な話で、スポーツライフルやアーチェリーなどの標的に向かって何かを当てる競技では、集中力の高い選手ほど標的が大きく見えるとされています。この集中力の高さは、訓練をすればよりよい大きさで被写体を捉えられるようになるになります。この集中力の高さを磨けば一瞬のシャッターチャンスをも逃がさないようになります。この集中力の高さは決してマイナス要因ではなく、未来の可能性が高いことを示していると理解してください。
■ 集中力を高める呼吸法
信じなくてもいいですが、シャッターを切るときの集中力を高めたいと思う読者さんは一度試してみてください。
シャッターを切る前に息を止めて切ってください。息を止める時間が長い人ほど集中力が高いとされています。これを人に教えると、思いっきり深呼吸のように息を吸い込んでカメラを構える人が多いですが、逆に手がブルブルと振るえて、息苦しく集中力を高めるどころではないはずです(笑)。実は息を吸い込んで止めるのではなく、息を吐いて止めるのです。水中に沈む競技をしているわけではありません。たくさんの酸素は必要なのです。息を胸にいっぱい吸い込んだ状態では、新しく息を吸うために、一度胸に残っている息を吐き出さなければなりません。これが無意識レベルで作用して集中力を逆に低下させてしまいます。息を吐いた状態だと、息苦しくなったらすぐに新鮮な息を吸い込めることが無意識の中にもあるようで、息苦しくなる直前まで集中力を高めることが出来るわけです。嘘と思って一度試してください。
■ 写真家になりたい
写真家に資格はありません。誰でも写真家になることは可能です。
写真家という職業に憧れて「なんちゃって写真家」という人には何人にも出会いました。しかし私が考える本物の写真家は、写真家として国に納税しているかどうかで判断しています。写真家としての仕事があり、写真家として売り上げがあるからこそ、納税をすることが出来るわけです。写真家として納税することは、写真家と認められている証拠であります。写真家を目指す読者さんは、納税が出来る本物の写真家になって国に貢献してください。人気が高いほど高額の納税をすることが出来ます。高額な納税が出来るように頑張ってください。私も高額な納税が出来るように頑張っています。
このページは2006年(平成18年)7月4日に開設しました。
2006年7月6日に事例とQ&Aを追加しました。
著作:石崎達也 制作:有限会社タツヤ模型